COMPANY:医療法人財団 荻窪病院 
SERVICE:speechEngine SDK 
INTERVIEWEE:布袋様、山本様、竹川様 

 

写真(左)・・・TQM推進部 副主任 山本 遼介 様
写真(中)・・・病院長/皮膚科部長/TQM推進部部長 布袋 祐子 様 
写真(右)・・・TQM推進部 竹川 奈穂 様 

 

  • 導入した目的:患者が見る手術内容や各種検査に関する説明用動画のAI音声として
  • 今までの課題:診療全体の工数の中で、説明に人手を割く事が多かった
  • 導入後の効果:説明動画の活用によりタスクシフトが実現した

 

 

1933年に中島飛行機株式会社の医務室として開業した荻窪病院。以来、杉並区の拠点病院の一つとして地域住民から根強い信頼を得ています。荻窪病院は歴史がありながらもITを活用したDX推進に取り組んでおり、今回、「ReadSpeaker」のAI音声活用により業務改善が行われたとのことで、荻窪病院の病院長である布袋様とTQM推進部のメンバーである山本様、竹川様にお話を伺いました。

※TQM:Total Quality Management

 

>>医療法人財団 荻窪病院 公式ウェブサイト

 

 

歴史ある病院でデジタル改革を図る

-荻窪病院の概要や特徴について教えてください 

 

布袋:当院は戦前に中島飛行機という軍用機の開発で有名な企業の医務室を起源としております。その後、医療法人制度の制定に伴い1950年に医療法人財団荻窪病院として開設されました。以来、杉並区で90年ほど地域の中核病院として診療を行っております。杉並区の人口は56万人程ですが、大学病院や公的病院がなく、当院を含めた民間病院と地域の開業医の先生方とで当地の医療を支えています。当院は、252床の病床数ですが約80人の医師を要し、400床並みの手術数や救急受入数を引き受ける体制を構築してきました。また、国内でも有数の血友病治療センターの機能も有しています。

 

 

-ずっと地域の医療を支え続けてきたのですね。そんな中デジタル化の推進に踏み切った背景を教えていただけますか 
 

布袋:そもそもデジタル化の前に、我々は以前から働き方改革に着手しておりました。例えば2008年頃に医師の業務負担軽減を目的としていち早く、医師事務作業補助者(メディカルアシスタント)を外来に配置しています。それでも、人と人の間のタスクシェアだけではちょっと限界があると感じ、やはり人にしかできないことは人にお願いし、機械にできることは機械にお願いしようということで2017年にTQM推進部の部長を拝命した際に、デジタル化を進めることになりました。まず始めたのが、定型業務をデジタル化するRPAやAI問診です。ただ、皆さんが想像されるようなAIホスピタルのような壮大で近未来的なものとは違います。どちらかというと、スケールとしては現実的に今すぐやれるようなことに着手しています。

 

  


-医療業界では、AIの活用に関するニュースを良く目にします。今後どのような場面でAIは活用されていくとお考えでしょうか。

 

布袋:そうですね。現在、私たちが使用しているAI問診を例にとると患者さんの症状や経過を入力するだけで精度の高い診断ができるとか、CTの撮影結果をAIが分析し、医師は確認の上、判定するだけという使い方は近い将来、臨床場面で現実化すると思います。AIが出した結果を医師が最終的に確認し、責任を持つという意味では我々医師も今まで以上に知識を求められるようになるでしょう。また、一部では人の仕事がAIに取られると思っている方もいますが、そうではなく、AIと上手く共存し、AIを上手く活用できる方が生き残れると思っております。

  


-デジタル化はTQM推進部が中心となって取り組まれていますが、どのような背景で立ち上がったのでしょうか 

 

布袋:前病院長より、TQM推進部を任された際に他の病院にはないTQM推進部を立ち上げて欲しいというミッションを頂きました。通常、医療業界でTQMというと安全管理や感染管理を主に担う部署というのが一般的です。しかし、前の質問でお答えしたように業務改善には早くから取り組んでいましたので、次はDXによる業務改善をTQMの仕事に加えていく事を考えました。私には特にシステム関係の知識やバックグラウンドもなく、むしろアナログ人間でしたが、素人目線だからこそ現場で本当に役に立つDXの改善提案や要望が出せるのではないかと思いました。なので、今回のAI音声を活用した取り組みも、そのような目線で議論した結果、部内で発案されたアイデアの一つでした。

 

 

患者への説明内容の標準化をAI音声で実現 ※動画あり

 

-「ReadSpeaker」のAI音声を患者様とのコミュニケーションにご利用いただいてますが、コミュニケーションで大事にされている点はありますか 

 

布袋:説明にあたっては患者さんの個性や多様性を尊重しながらコミュニケーションを取る事を心掛けています。医療従事者と患者さんの医療知識とでは、情報に大きな格差がありますから、一方的に医療従事者側が伝えるだけにならないよう最善の注意をはらっています。コミュニケーションの最大の目的は患者さんの不安や心配事を汲み取り、少しでも内容を理解して頂くことだと思います。

 

 

-となると、課題は質の高いコミュニケーションをどう安定して提供できるかという点でしょうか
 

布袋:はい。私の専門は皮膚科なのですが、医師が患者さんへ手術やパッチテストなどを含む様々な説明を行っています。時間が取れず、医師が説明できない場合は看護師やメディカルアシスタントが代わりに説明しています。しかし、説明にかかりきりになると他の仕事が中断され、結果的に患者さんの待ち時間が長くなることにつながりますし、この、動画化に着手した事でスタッフごとで説明の仕方に違いがでていたこともわかりました。

 

 

-AI音声の導入の過程や効果をお聞かせください 

 

布袋:試しに私が自宅で自分の声を録音して動画を作りました。当然ながら、一発で満足いくようなものは仕上がらず、確認しては録音をし直して、みたいなことを続けていました。しかし、今後内容に更新や修正が発生した場合に、同じ声で再録する手間や、声を吹き込んだ人が退職した場合、全て作り直しになる事も考えると、「ReadSpeaker」のようなツールを活用することに利便性を感じ、実際使用してみてその効果を感じているところです。

 

 

-日々多忙な現場のオペレーションを変えるのは安易なことではないと想像します。導入に至るまで反対の声や抵抗などはなかったですか? 

 

布袋:私がTQM推進部の責任者という事もあり、導入の決断に関してはそこまでハードルは高くなかったです。ただ、現場としては動画の基となるスライドを作らないといけないので運用を開始するまでに現場の皆に負担を強いたかもしれません。それでも、運用が始まればプラスに働くことは明白だったので、その目的はしっかりと共有するように意識していましたね。あとは、よく考えたら「自分達の声を入れるのは恥ずかしいね」ということにもなったみたいで、最終的には組織全体として前向きに取り組めました。

 

 

 

 

AI音声の利活用があたりまえの医療現場へ 

-実際の使用感はどうでしたか 

 
竹川:まず率直な感想が「アナログな私でも簡単にできる」と思えたことです。最初お話を聞いたときは不安な気持ちでいっぱいでした。AI音声の音源を作成するにはもっと複雑なプログラミング的なものを想像していたのですが、いつの間にか読ませ方にこだわりを持ち始めていました。一度覚えてしまえば本当に簡単なので自分でさわってみて良かったなと思います。

 

 

山本:私も操作してみたのですが、医療用語や病名だとどうしてもイントネーションの調整が必要になりますが、直感的に編集操作ができるので使いやすいと思います。慣れてしまえば、どういったところに間を入れれば綺麗に言葉と言葉がつながるとか、自然にわかるようになりました。ある程度使いこんでいけば誰でも快適なAI音声の編集ソフトになるなと感じました。

 

竹川:個人的には途中まで作成したものを一時保存できるので業務の合間でできることもありがたいです。どうしても忙しかったりまとまった時間が取れないことが多いので、自分のペースである程度対応できることがメリットですね。

 


-患者様の反応はどうですか? 

 

山本:最初の頃はいきなり、視聴用のタブレットを渡されて困惑しないかなと思ったのですが、手術や検査の説明を受ける事自体初めての患者さんが多く、動画を見てもらう事がそもそもの運用と思ってもらえるようで、スムーズに見てもらえています。動画を予め見ていただく事で、判らない点があれば医師がしっかり説明を行うため理解の促進にも役立っていると思います。今後は病院のホームページでも同じ動画を視聴できるようにし、患者さんの利便性を向上していきたいと思います。

 

 

 


-荻窪病院の今後の取り組みやビジョンについて教えてください 

 

布袋:前病院長から引き継がれてきた質の高い安心安全で信頼される医療の提供をしっかりと継続し、杉並区の拠点病院として患者さんの医療ニーズに応えてまいりたいと思います。さらに今回は新たに「地域と患者さんに持続的な健康と幸せを」というPurpose(存在意義)を掲げました。このPurposeを全職員で共有し、皆で同じ方向を向いて、 職員が人にしかできない、患者さんに寄り添う仕事にシフトしていく事で、このパーパスが達成できればと思っております。 そのためにもAI音声からDX全般を上手く活用し、取り入れたいと思っています。我々はこれからも患者さんに感謝されるような思いやりのある病院を目指します。


 

音声合成/読み上げについて

「合成音声」や「AI音声」は、音声合成技術の一般的な呼称で「音声読み上げ」や「読み上げ」は、文章を読み上げる機能を指します。これにより、ユーザーは文章を目で読む必要がなく、音声によって情報を受け取ることができます。「ReadSpeaker(リードスピーカー、旧VoiceText)」は高品質の音声合成エンジンを提供する世界的リーディングカンパニーで、自然な音声を生成するために機械学習やディープラーニングなどの最新技術を駆使しています。

 

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